浴槽塗装工事概説

住宅リフォーム現場で徐々に浴槽塗装が取り入れられるようになりました。ここでは浴槽塗装の工事とはどのような事をするのか、外壁塗装や一般の塗装とどう違うのかを簡単にご説明します。

■ 浴槽の種類
現在、一般家庭で使用されている浴槽の種類は次の通りです。浴槽の種類によって浴槽塗装の内容が変わりますので、種類を理解しておくことは重要です。

1.FRP
ユニットバスなどで一般的に使用されているプラスチック系の浴槽です。ポリエステル樹脂をガラス繊維に含浸させ強度を高めた浴槽です。劣化すると変色、細かなひび割れ、欠けなどが発生します。

2.FRA
FRPの高級タイプです。アクリル樹脂の浴槽で、ジェットバスやジャグジーバスなどでよく使用されています。FRPと同様に劣化すると変色、細かなひび割れ、欠けなどが発生します。

3.人工大理石浴槽
FRPはポリエステル樹脂をガラス繊維に含浸させ固めていますが、ポリエステル樹脂を型に流し込み固めた厚みのある浴槽です。タイルなどで外側を外装した埋込型の浴室浴槽となります。劣化すると変色のほかブリスタと呼ばれる特有のフクレが発生し、そのまま使用を続けるとフクレが破裂して破裂箇所が皮膚に刺さり浴槽として使用するには適さなくなります。

4.ホーロー浴槽
ホーロー浴槽には鋳型にホーロー質を流し込み焼付けした鋳物ホーローと薄い鉄板にホーロー質を焼付けした鉄板ホーローとがあります。鋳物ホーローは高級浴槽として使用されていますが、100kg前後の重量がありますのでそもそも設置工事自体が大がかりなものになります。その点、鉄板ホーローは軽く、浴槽のほかにも洗面の手洗いボールにも使われています。ホーロー浴槽の一番のダメージは裏側の下地となる鉄板がサビて表面のホーロー質をも破壊してしまうことです。表面までサビが出てしまうとほぼ穴が開いていると思っていただいて結構です。穴が開いてなくとも下地の鉄板はスカスカ、ぼろぼろの状態です。

5.ステンレス(カラーステンレス)浴槽
バランス釜が多く使用されていた頃、このステンレス浴槽がアパートなどで広く使用されていました。スチールですから一番長持ちします。ただシルバーの色合いが冷たさを感じさせるということで、徐々にカラーステンレスに切り替わってきました。同じステンレス素材ですが、製造工場で焼き付け塗装を行い出荷されます。塗装をしますから様々な色合いに仕上げることができます。

その他に、温泉場にある天然石材を使用した浴槽や、ヒノキの木材の浴槽、あるいは街の銭湯にあるようなタイル張りの浴槽があります。このような浴槽は業務用として使用されていますのでここでは解説いたしません。

■ 浴槽塗装で使用する塗料
浴槽塗装で使用する塗料は、浴槽塗装専用に開発された塗料です。それ以外の塗料を使用すると間違いなくエラーが出ます。エラーとしては次の通りです。

外壁塗装などの一般の塗料を使用すると、すぐに塗膜にフクレが発生し破れ、はがれてきます。船用FRP塗料を使用すると長持ちしますが、船用FRP塗料は自己剥離型の塗料で、水中で塗料が少しずつはがれて汚れの付着を減らすという特質を持たせているため、これを一般の浴槽で使用すると、塗料に含まれる重金属など体に害を与える成分が溶けだしてしまい大変危険です。たまにこの塗料を使って浴槽を塗装する業者がいますが、犯罪と呼んでも良い位です。信じ難いことです。

このよな浴槽塗装専用塗料以外の塗料を使う業者はに共通することは、施工料金が安い、ということです。さらに施工期間も1日または1日半程度です。逆の言い方をすれば安く早く施工するために専門外の安い塗料を使うということです。これらの専門外の塗料はホームセンターで安く購入できます。

*外壁塗料や船用塗料 4L  4,000円前後
*浴槽専用塗料 4L  30,000円前後

これだけ価格の差があります。しかもこれは上塗り塗料であり、下塗り塗料も浴槽塗装作業では必要になります。安い業者は勿論上塗りだけで、下塗りは行いません。

■ 浴槽塗装作業要領
それではいよいよ実際の浴槽塗装はどのような作業を行うのかを概説します。

1)下地処理
どのような塗装でも本塗りする前に下地を整えることが必要です。特に浴槽は40℃前後のお湯が常時使用される場所ですから、この下地処理が塗料の密着を強固なものにするために最も重要な作業となります。先ずは表面研磨です。足付けとも呼ばれています。粗めのサンディングペーパーまたはディスクにて浴槽の表面をサンディングします。表面の光沢がすっかり失くなる状態まで行います。ホーロー浴槽は表面が硬いので薬品を使用してホーロー質を壊します。これをエッチングと呼びます。

2)補修
ひび割れがあったりサビが出たりしている場合は適切な補修が必要となります。サビは削り取り、サビ止め剤を塗布後、パテ処理を行います。ひび割れは小さいものであればパテ埋めで処理しますが、大きな割れはライニング処理が必要です。ライニングとはポリエステル樹脂をガラス繊維に含浸させ固める方法で、面として広い範囲で補修する方法です。

3)周辺養生
足付けや補修が終了したら、浴槽をよく洗浄して水気を拭き取り、ヒートガン等を使い完全に乾かします。この時、追い炊き口から内部配管に残った水が出てきますから、ブロアを使って吹き飛ばします。また、浴槽周囲にはコーキングシールが施工されていますが、経年劣化している場合も多く、このような劣化しているコーキング個所はカッターナイフなどを使用して取り除きます。こうして乾燥作業が完了したら浴槽以外をマスカーで養生します。洗い場床面、壁面、天井等に塗装ミストが付着しないように確実に養生します。

4)強制排気ファン設置
吹付け塗装時に塗装ミストが発生します。これを室外に強制排気するために局所用の排気ファンを設置します。ビニールダクトを接続し戸外まで排出します。

5)吹付け塗装作業
ここまで準備が整ったらいよいよ吹付け塗装です。浴槽塗装には、
1.下塗り
2.上塗り
が必須です。FRP浴槽は塗料の密着が良いので下塗りを行わない業者も多いのですが、推奨しません。下塗りは上塗りの密着を促進させるとともに、塗装の仕上がりも左右する重要なファクターなのです。手を抜かずに下塗りは必ず実施しましょう。なお、塗料はその塗料によって主剤、硬化剤、シンナー等の配合比率がありますのでそれに従ってください。なお、実際のガン吹きの要領は現場を沢山こなして腕を磨いていくしかありませんのでここでは割愛します。

6)コンプレッサー
コンプレッサーは主に次の2タイプが使用されています。
1.一般圧コンプレッサー
2.温風低圧塗装機
1.の一般圧コンプレッサーは住宅工事現場などで大工さんが使用しているコンプレッサーです。一般圧と高圧の2種類が選択できます。浴槽塗装では一般圧仕様で使います。2.の温風低圧塗装機は浴槽塗装業者が割と多く使っているようです。元々、浴槽塗装の技術は海外から伝わってきましたから、その時にコンプレッサーも一緒に輸入されました。それが温風低圧塗装機だったために今も多くの業者が使っています。どちらも一長一短ありますから、自分のスタイルに合ったものを使うとよいでしょう。

7)仕上げ処理
下塗り、上塗りの塗装が完了し塗膜が乾くと仕上げの処理を行います。住宅現場での塗装作業ですから、必ず塗装時のミストや細かな埃が塗膜に付着します。これをきれいに磨いて肌触りの良い状態に仕上げます。#400位の耐水ペーパーで塗膜にまとわりついたブツを取ります。次に#800で丁寧に全体を磨きます。次いで#1000、#2000、#4000と磨き上げていき、仕上げ用コンパウンドを使ってバフ研磨を行って完了となります。

後片付け、掃除をして施主様に引き渡しとなります。大きな補修等がなければ2~3日間の工期で施工できます。作業時には研磨音やシンナーなどの溶剤臭が発生しますから、特にマンション等で事前届けが必要な場合は必ず届けておきましょう。

浴槽で使用する塗料に限らず一般的に塗料は、塗布完了後完全に硬化するのに4週間程度必要といわれています。一般のご家庭で塗装作業後、4週間もお風呂が使えないのは現実では難しいので、仕上げ処理の翌日より使用していただきますが、前述の理由によりお風呂を使い終わたらすぐにお湯を抜いてもらい、塗膜の乾燥を促していただくよう説明しておくことが必要です。